モータリゼーション
モータリゼーション
自動車が広く普及し、社会的に自動車の利用が一般化すること
を指します。
平たく言うと車社会になるということですね。
交通手段の移行
19世紀、陸上交通の王者は鉄道でした。自動車の技術は未発達だったうえに極めて高価で庶民が買えるものではなく、道路も整っていなかったため選択肢が鉄道しかなかったのです。
ところが20世紀後半になると、世界的に急速に自動車が普及するようになります。 大きな理由は、
- 自動車価格の低廉化
- 経済発展に伴う所得の向上
- 道路整備の進行による所要時間の短縮
- 自動車交通自体が持つ利便性の高さ
が挙げられます。
20世紀初頭にフォードが大量生産システムを確立したことで自動車価格は大幅に低下、さらに先進国では戦後急速な経済成長を遂げたことで、自動車は中間層でも手が届く商品となりました。
また自家用車を持っていれば、駅まで歩かないといけない上に時刻表に縛られる鉄道よりも車の方が圧倒的に便利です。さらに、貨物輸送でも戸口輸送(door-to-door)ができる自動車輸送の利便性が買われ、鉄道のシェアは次々と自動車に移行していきました。
問題点
モータリゼーションの進行により人々はより便利な生活を享受できるようになったわけですが、一方で多くの問題点も抱えています。
代表的な問題点として、
- CO₂排出量の増加
- 渋滞の激化
- 公共交通の衰退
が挙げられます。
CO₂排出量の増加
自動車はCO₂排出量が他の交通機関よりも多いですから、他の交通機関から自動車に転移する人が増えればCO₂排出量も当然増えます。
渋滞の激化
自動車は輸送効率が非常に低いです。どういうことやねんという話ですが、要は1人当たりの占有面積の話です。 満員電車の1人当たり占有面積なんて知れています。高々1/4m²程度でしょう。 一方で車だとどうでしょう。自家用車だと多くの場合一台当たり1人しか乗っていませんし、車間距離も取らないといけない。1人当たり10m²はとっていると考えてもおかしくありません。自動車の輸送効率は圧倒的に悪いわけです。 ですから、人を運ぶ上で自動車交通は他の交通機関に比してより広い面積を要するということになります。同じ人数を運ぼうと思った時、鉄道の線路よりも圧倒的に広い道路を作らないと人を運びきれないわけです。 とはいえ、道路を作れる面積なんて知れていますから結局道路は狭くなり、結果渋滞が多発することになります。
公共交通の衰退
みんなが自家用車に乗るようになって公共交通(バス、鉄道)に乗らなくなると、公共交通の乗客が減少し採算性が悪化、路線の維持が難しくなるという事態が起こります。 自動車を運転できない高齢者、子供(主に学生)などの交通弱者にとって公共交通は唯一の交通手段であり必要不可欠なものですから廃止するわけにもいかず、赤字を垂れ流しながらも運行せざるを得ないという状況に陥ります。そのような負担は自治体や国に重くのしかかり、財政を圧迫する要因ともなっています。