伊勢物語 〜初冠〜
伊勢物語 〜初冠〜 深掘り解説
ここでは、伊勢物語 〜初冠〜 について、あらすじをサクッとビジュアルで理解していこう。
成人した男の話
むかしおとこありけり。うゐかぶりして、ならのみやこかすがのさとにしるよしして、かりにいきけり。
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「うゐかぶり」は、成人式 のこと。年齢は今の成人式よりも若い。
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「しる」は、領有すると言う意味。漢字では「領る」って書く!
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「よし」は「由」と書いて、縁のこと。
そのさとに、いともなまめきたるおんなはらからすみけり。かのおとこかいまみてけり。
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「なまめき」は「なまめく」で、今風の美しさを表すよ。
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「はらから」は同じ母の兄弟姉妹を指す。 →ここでは「おんなはらから」なので、姉妹だね。
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「かいまみ」は古典常識だよ。 →男が女のことを覗き見ることを意味するんだ。
おもほえずふるさとに、いともはしたなくありければ、ここちちまどひにけり。
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「ふるさと」と表現することで、平城京が昔の都であったことを連想させているよ。
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「はしたなく」は「はしたなし」で、不釣り合いと言う意味。
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「こことまどひ」は「心地まどふ」で、気持ちが乱れること。
《ここで問題》なぜ、不釣り合いな女姉妹に気持ちが乱れたのだろうか?
→答えは画像を見てみよう
おとこきたりけるかりぎぬのすそをきりて、うたをかきてやる。そのおとこしのぶずりのかりぎぬをなんきたりける。
かすかののわかむらさきのすりころもしのふのみたれかきりしられす
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これは、男から女はらからへの和歌。
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内容は、《若く美しいあなた方のせいで私の心は乱れ、しのぶずりの乱れ模様のように心が乱れてしまう故ことも知られませんことよ。》って感じでしょうか。
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「しのぶずり」という着物について前の文章にありましたね。 →これは和歌の内容を引き立たせるための工夫です。
皆さんも好きな人や可愛い人を見ると、ドキドキして乱れてしまいますよね。
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「しのぶずり」は乱れ模様を暗示していたのです。
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信夫文知摺も参考にしてね。
となむ、をいつぎてやれりける。
「をいつぎ」は「をいつぐ」で大人みたいにと言う意味。
*実はここからは、筆者の批評なんだ!
今あった男のやり取りを見て、どう評価するのかな?
まずは大人みたいと評価したね。
ついでおもしろきことともやおもひけむ。
みちのくのにしのふもちすりたれゆへにみだれそめけんわれならなくに
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これは『古今和歌集』の源融の和歌。
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内容は、《誰のせいで心が乱れた私ではないことなのに》って感じでしょうか。
ちょっと難しいね。
- 意訳しちゃうと《あなたたちのせいで心が乱れたんだよ》って意味だね。
といふうたのこころばへなり。むかしひとは、かくいちはやきみやびをなむしける。
- 「いちはやき」は、激しいと言う意味だ!
では、作者の批評をまとめてみよう。
画像にもあるように、
- 大人っぽいね
- 源融の和歌のようだね
- 昔の人は激しい風流だな
という評価を下しているんだ。