【和歌篇】日本文学史マスターへの道⑦『千載和歌集』
第7代『千載和歌集』
《成立時期》
- 文治3年(1187)年
《宣下者》
- 後白河法皇
《撰者》
- 藤原俊成
《序》
仮名序あり
《編集プロセス》
寿永2(1183)年2月に後白河院の院宣を平資盛が藤原俊成のもとに届け、
俊成はそれ以前から私撰集を選んでおり、それを母体としていると推測できる。
文治3年(1187)年9月20日に形式的奏覧、
文治4(1188)年4月22日に奏覧し、
俊成の自詠追加があり、
8月までには最終奏覧と考えられる。
《社会動乱》
- 保元元(1156)年6月「保元の乱」
- 平治元(1159)年12月「平治の乱」
- 後白河院の院政開始
- 治承4(1180)年6月「福原遷都」・8月源頼朝挙兵・9月木曽義仲挙兵
- 寿永2(1183)年2月千載集下命・6月25日平家都落ち
- 文治元(1184)年2月「壇ノ浦の戦い」で平家滅亡
《伝本》
異本系と言われるものはないが、伝本間で相違がある。俊成自筆千載集の切である「日野切」は伝存する。
《伝本の基準歌と分類》
Aあらず飲みなりゆく旅の別れ路に手慣れし琴の音こそかはらね 右大臣
B暁になりやしぬらん月影の清き河原に千鳥鳴くなり 右大臣
C露深き浅間の野らに小萱刈るしづ袂もかくは濡れじを 藤原清輔朝臣
- 甲:AありBなしCあり
- 乙:AなしBなしCあり
- 丙:AなしBありCなし
- 丁:AなしBありCあり
→甲乙類の方が書写年次が古い傾向にある
《部立》
- 四季(春上下・夏・秋上下・冬
- 離別
- 羇旅
- 哀傷
- 賀
- 恋(1〜5)
- 雑(上・中・下)
- 釈教
- 神祇
《代表歌人》
- 源俊頼52首
- 藤原俊成36首
- 藤原基俊26首
- 崇徳院23首
- 俊恵22首
- 和泉式部21首
- 道因20首
- 藤原清輔20首
- 西行18首
- 大江匡房17首
- 徳大寺実定16首
- 九条兼実15首
- 藤原季通15首
- 堀河15首
- 藤原顕輔14首
- 源頼政14首
《主題や配列》
〈春の題〉
立春・残雪・子日・鶯・若菜と四季の景物の移り変わりによる古今集以来の伝統的構成
詠歌歌人は後拾遺集・金葉集・当代歌人と歴史的展開を基調とする。
〈夏の題〉
更衣・卯花・夏草・葵・郭公という伝統的順序。
〈秋の題〉
立秋・秋風・七夕・刈萱・萩・女郎花の順序で、秋の景物が色々と展開される。
〈賀の特徴〉
当代歌人で締められており、巻末には後一条院、白河院以下歴代の大嘗会歌群を並べている点。
〈恋部の構成〉
伝統的な基本を引き継いでいる。
- 恋1に初恋・忍恋という初期段階
- 恋二は契りを結んでいないが愛が深まった状態
- 恋3は契りを結び、その後に不安が募る状態、
- 恋4は不破が生じている状態
- 恋5は破局するも懐かしむ状態
〈離別・羇旅の構成〉
千載集以前は、離別が主、羇旅が従的であったが、千載集では逆転が起こっている。
《性格》
僧侶の急激な増加により、全体的に宗教的な雰囲気や隠者的性格がある。