日本文学史マスターへの道㉟
日本文学史マスターへの道
近松門左衛門
〔近松門左衛門像,早稲田大学演劇博物館所蔵〕
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《確認ポイント》
✔︎時代物
✔︎世話物 ✔︎理念
《近松門左衛門について》
近松門左衛門
承応2(1653)年〜享保9(1724)年
越前国に生まれた。
越前吉江藩士の家に生まれ、
15歳の頃に父の信義が浪人し一家に都に上り、
公卿に仕えた。
奉公をやめたのち、
浄瑠璃の宇治加賀掾と知り合い武士を捨て、
地位の低いとされていた芝居の世界へと入る。
《浄瑠璃作者として認められた作品》
天和3(1683)年上演『世継曽我』
《竹本義太夫との関係》
竹本座の竹本義太夫と提携し、義太夫のために『出世景清』を書き、写実性を含む浄瑠璃の新たな分野を切り拓いた。
《歌舞伎との関わり》
歌舞伎の脚本も手がけており、坂田藤十郎の座付作者として活躍した。
《近松門左衛門の時代物》
歴史上の事件や伝説に取材した作品で、
70編程ある。
五段構成で、題材は神代から当代までと幅広い。
インパクトある状況設定で、
さまざまな人物が登場し、
武士道の精神である忠義のための犠牲を描く。
- 『世継曾我』
- 『出世景清』
- 『用明天皇職人鑑』
- 『国姓爺合戦』
- 『平家女護島』
- 『関八州繫馬』
などが代表作品。
『出世景清』
貞享3(1686)年初演と見られ、竹本義太夫の行く先を祝うために作り、平家の残党である景清が源頼朝を狙い、捕えられてしまい地震で両眼をえぐるというストーリー。
『国姓爺合戦』
正徳5(1715)年初演で、明朝の旧臣と日本人女性の間に国姓爺(和藤内)が生まれ、中国へ行き明朝復活をさせるというストーリー。
《近松門左衛門の世話物》
当時の町人社会で実際に起こった事件などを脚色した作品で24編ある。
三段構成で、義理・人情の葛藤による苦悩や悲劇を、人間の真実視点から描く。
- 『曾根崎心中』
- 『心中重井筒』
- 『堀川波鼓』
- 『冥途の飛脚』
- 『大経師昔暦』
- 『心中天網島』
- 『心中宵庚申』
- 『女殺油地獄』
などが代表作品。
『曽根崎心中』
元禄16(1703)年初演で、醤油屋の手代徳兵衛と遊女お初が義理に迫られるも恋を貫き曽根崎天神の森で心中するストーリー。
『冥途の飛脚』
正徳元(1711)年初演で、飛脚問屋の忠兵衛が公用為替金の封を切り、遊女梅川と心中を決意するも捕えられるというストーリー。
『心中天網島』
享保5(1720)年初演で、紙屋治兵衛が女房おさんと遊女小春との関係の中、小春と心中するストーリー。
『女殺油地獄』
享保6(1721)年初演で、油屋の河内与兵衛が豊島屋の女房であるお吉を惨殺するというストーリー。
《近松門左衛門の理念》
穂積以貫の『難波土産』「虚実皮膜論」として、芸の真実は虚と実の境界に存在し、現実だけではダメで、虚構が必要であるというもの。