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ボルタ電池


概要

「ボルタ電池」と、正極のと負極のを希硫酸に浸した電池のこと。しかしこいつは問題点の多い不完全な電池で、後に改良型の「ダニエル電池」などが現れます。

ボルタ電池_1.png

正極活物質は・負極活物質はで起電力の理論値は0.76Vですが、最初の一瞬は正極の表面のが正極活物質として働くため起電力が1.1Vとなります。また電池式は以下の通り。

詳細

仕組み

ボルタ電池は、

という酸化還元反応を利用した電池です。こいつが電池として働く仕組みは以下の通り。

1. が電子を投げる

が導線に向かって電子を投げ、自身はとなって溶液に溶け出します。ちなみにそもそもこの酸化還元反応が起こるのは、イオン化傾向だからということにも注意。

ボルタ電池_2.png

2. が電子を受け取る

導線からやってきた電子を正極の表面でが受け取り、気体のとなってブクブクと泡が出てきます。

ボルタ電池_3.png

このときに導線を流れる電子のエネルギーを利用します。

問題点

1. が直接反応する

リモートで酸化還元反応を起こすのが電池の基本の仕組みですが、ボルタ電池ではを希硫酸にただ浸しているだけなので直接反応してしまいます。まあ亜鉛を希硫酸に入れたら溶けるのはよく考えりゃ当然です。

浸してるだけで電極が溶け続ける電池はもちろん使い物になりません。その後このような問題点を踏まえて、正極活物質と負極活物質を素焼き板で仕切った「ダニエル電池」などの新型が開発されていきます。

2. 分極が発生する

ボルタ電池では、理論値よりも実際の起電力が小さくなる「分極」という現象が起こります。希硫酸に電極を浸した瞬間は、正極の表面にあるわずかなが正極活物質になるため起電力が1.1Vとなり、それが反応しきるにつれて理論値の0.76Vに落ちていくと思いきや、それを超えて0.4Vほどまで下がってしまいます。

この現象の原因は、は電子を受け取ってからさらに2粒が出会ってになる必要があり、ここで無駄なエネルギーが消費されるからです(*注1)。ただしこれは大学入試では出題されない(はず)なので「ふーん」でOK。

ちなみに正極のを、有機化学などでを反応させる触媒として使われるに変えると、起電力がほぼ理論値を示します。これもざっくりした話ですが、の反応の触媒と使われることから分かるように、の扱いに長けているというイメージです。

3. 「減極剤」

過酸化水素水などの酸化剤を加えると分極が解消されるため、この酸化剤を減極剤と呼んでいた過去もありました。しかし、酸化剤を加えるとは単に負極活物質をからなどに変更するということで、分極を解消したというよりは活物質が異なる別の電池になったというのが正しいです。よってこの言葉は、普通は大学入試で出題されることはないはずです。

実際、ボルタ電池に過酸化水素水を加えると、起電力は0.76Vを超えてはるかに大きな値になってしまいます。

4. 気体の水素が生じる

最後に少しリアルな事情ですが、気体の水素が生じてしまう電池は電池として使いづらいです。スマホを使っていたら水素が溜まって爆発したら嫌ですよね(そんな事件もありましたが...)。

実際、たとえば「ニッカド電池」という電池では充電時に気体の酸素が生じる可能性があるため、その対処まで含めて電池が作られています。

補足

  • (*注1)金属の表面の性質によってこのときのエネルギーが異なり、これを「水素過電圧」といいます。は水素過電圧が小さく分極があまり起こりません。また分極の他の原因として、気体の水素が電極表面を覆ってしまい次の反応が妨げられる、なども挙げられます。

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