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熱効率

概要

気体の状態を変化させ、一巡して元の状態の戻すことを考える。下の状態に戻すということは、温度も元に戻るので、内部エネルギーも元通りになる。

この一巡の間に、気体が受け取る(吸収する)熱量の総和を 、捨てる(放出する)熱量の総和を 、気体が外部からされる仕事の総和を 、気体が外部にする仕事の総和を とする。これらの文字は、とりあえずここでは全て正の値をとるとする。つまり例えば、気体が外部に仕事をしたときは、 をマイナスするのではなく、 に加える。

そうすると、熱力学第一法則から、

となるので、変形すると

これを日本語にすると、気体が正味受け取った熱量(受け取った熱量 − 捨てた熱量)は、気体が正味外部にする仕事(外部にする仕事 − 外部からされる仕事)に等しい、ということ。

これを活かして、受け取った熱量を、外部にする仕事に変える機関を熱機関という。自動車のエンジンやエアコンなどはこの原理を用いている。物理に感謝したくなるタイミングの1つ。

そして、熱期間がどれくらい効率の良いものなのかを測る指標が熱効率で、次のように定義される。

熱効率

つまり、受け取った熱量の総和()のうち、どれくらいを正味外部にする仕事()に用いたか、を測っている。この定義を忘れやすいので気をつけよう、分母は「受け取った」熱量のみ。

この熱効率が大きければ、受け取った熱量を効率よく仕事に使える事になる。

しかし実は、熱効率は に到達することがはできない。熱効率の式を変形していくと、

となるが、気体が一巡する間に捨てる熱量の総和()を にすることはできない(熱力学第二法則(トムソンの原理))ので、熱効率は から の間となる。

熱効率を求める際は、求めやすい式で求めればOK。

例

【問】単原子分子の理想気体の状態を、下の図のように の経路に沿って、ゆっくりと変化させた。ただし、 は定積変化、 は等温変化、 は定圧変化とし、 の間に気体が受け取った熱量は とする。このとき、このサイクルの熱効率を求めよ。

Untitled 1 P1 67.png

【答】それぞれの経路での、気体が外部からされた仕事、気体が受け取った熱を求めていく。直接求めにくいものは、熱力学第一法則で求まることが多い。

途中で、熱を受け取っているのか、捨てているのかわかりづらい経路があるので、方向が明確にわからないものがもしあれば、ここでは気体が外部からされた仕事や受け取った熱を正として考えることにする。

ややこしいがとても大事で頻出テーマなので、下のまとめ表を見ながら頭を整理しよう!

■

Untitled 1 P1.png

定積変化なので、気体が外部からされた仕事は 。

受け取った熱量は、直接求められないので、熱力学第一法則を用いる。そのためにまずは内部エネルギーを考える。状態 と での温度を とすると、単原子分子の理想気体なので、内部エネルギーの変化は、

で求められる。次に、状態 と での状態方程式を考える。気体の物質量を とすると、それぞれでの状態方程式は、

となる。下から上を引くと、

となるので、内部エネルギーの変化は

と求まる。よって、 で受け取った熱量を とおくと、熱力学第一法則より、

となる。

■

Untitled 1 P2.png

問題文から、受け取った熱量は である。

気体が外部にした仕事を求めよう。グラフより体積が増えているので、外に対して正の仕事をしていることはわかるが、曲線であることもあり直接計算が難しいので、ここでも熱力学第一法則を用いる。

等温変化なので、内部エネルギーは変化しない。よって、外部にした仕事を とおけば、熱力学第一法則より

となり、確かに気体は外部に対して正の仕事をしている。(このように、仕事の方向がはっきりわかっている時は、そっちを正として文字を置いてしまってOK。「後でこんがらがるわ!」という方は、最初に決めた正の向きに、忠実に文字を置いて考えよう)

■

Untitled 1 P1 70.png

定圧変化であり、気体が外部からされた仕事は、

となるので、 を求める。 が等温変化なので、状態 での温度は であり、状態方程式は、

これと、上で考えた状態 での状態方程式

を比較すれば

が得られる。よって気体が外部からされた仕事は、 より

と求められる。

Untitled 1 P3.png

では、受け取った熱量を とすると(受け取るのか捨てるのかすぐにはわからなかったので、最初に決めた受け取る方向で文字を置いた)、直接はもとまらないので、ここでも熱力学第一法則を用いる。

状態 での温度を とすると、単原子分子の理想気体なので、内部エネルギーの変化は、

で求められる。

※上で議論した通り、等温変化より

気体の物質量を とすると、状態 での状態方程式は、上でも考えた通り、

これらを代入して、

と求められる。

よって熱力学第一法則より

気体がされた仕事

となり、熱を捨てていることがわかる。(受け取った熱量を としていたことに注意)

■ 熱効率の計算

よって、経路中の熱の出し入れや気体の仕事を全てをまとめると、

Untitled 1 P1 69.png

となるので、熱効率は、

正味外部にする仕事受け取った熱量のみ

と求められる。

受け取った熱量捨てた熱量受け取った熱量

で求めてももちろんOK。

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