日本文学史マスターへの道⑱
日本文学史マスターへの道
擬古物語
《確認ポイント》
✔︎擬古物語というジャンル
✔︎平安時代もの作り物語との関連性 ✔︎主要な作品名
《擬古物語とは》
擬古物語
主に鎌倉時代に成立した作り物語のことを指す。
鎌倉時代物語とも言われる。
現存するのは30編ほど。
例えば、
- 『海人の刈藻』
- 『浅茅が露』
- 『石清水物語』
- 『いはでしのぶ』
- 『苔の衣』
- 『しのびね』
- 『我が身にたどる姫君』
《特色》
『源氏物語』などの平安物語文学の模倣と捉えがちではあるが、 趣向や工夫は個性豊かである。
『大鏡』など歴史物語の影響も受けている。
ただ、貴族社会で作られたもので、
読者も知識を持っていなければならないため、
普遍性がなく衰退をたどる原因となった。
《『住吉物語』》
〔住吉物語絵巻、東京国立博物館蔵〕
【成立時期や作者】
二巻本で、作者は不明。
現存するものは散逸した物をもとに改作したもので、
古本成立は10世紀後半の成立と考えられる。
【内容】 母を亡くした姫君は、四位少将に求婚されるも、
継母の悪巧みによりその娘に横取りされる。
継母の嫌がらせが続き、姫君は住吉に隠れる。
少将は長谷寺観音の導きにより姫君を探し当て、
二人は結婚し、子どもにも生まれ、生活は幸せになり、
継母は悪事の報いで零落し、みじめな最期となる。
【影響など】
古本『住吉物語』は、主題が継子いじめの作品で
「落窪物語」などに大きな影響を与えた。
擬古物語の『住吉物語』は、多くの人の手で改作され、異本が多い。
《『松浦宮物語』》
〔最古の写本〕
【成立時期や作者】
三巻本で、藤原定家の作と考えられる。
成立は鎌倉時代初期とされる。
【内容】
遣唐副使として渡唐した橘氏忠は、
皇帝の妹である華陽公主に琴を学び、契りを交わし、
皇帝の死後に住吉明神の加護により内乱を平定し、
后と契りを交わす。帰国後、公主と再会するが、
后への恋慕は消えず。
伝奇性の強い物語
【影響など】
舞台を藤原京時代に置き、
『源氏物語』の影響を排除しようとしている。
《『しのびね』》
【成立時期や作者】
作者未詳で、古本は12世紀後半の成立とみられ、
現存するものは「風葉和歌集』成立の1271(文永8)年以降に改作されたもの。
【内容】
四協少将きんつねは、故中務宮の姫君と結婚するも、
父左大臣の反対を受け、左大将の姫君と結婚する。
姫君はきんつねのいない間に追放され、帝から寵愛される。
きんつねは出家し、一方姫君は皇太子を生んで后となる。
【影響など】
中世に、相思相愛の男女が引き裂かれ、男が出家し、女が帝に寵愛される「しのびね型」の物語が多く作られた。