日本文学史マスターへの道①『古事記』
日本文学史マスターへの道
『古事記』
〔真福寺収蔵の『古事記』(国宝。信瑜の弟子の賢瑜による写本)〕
とっつきにくいという人におすすめは、ラノベ古事記のサイト、書籍も販売されてるよ。
《確認ポイント》
✔︎現存する日本最古の書物
✔︎稗田阿礼と太安万侶の関与
✔︎文学的な性格が強い
《書名》
『古事記』と言う書名は、「ふることぶみ」とも読まれ、
古の事を記した書物と、漢字そのままの意味。
《編者》
太安万侶(おおのやすまろ)
〔太安万侶(菊池容斎画『前賢故実』)〕
文武天皇・元明天皇・元正天皇に仕えた学者で、
『日本書紀』の編纂にも関与したらしい。
《成立過程》
『古事記』が成立する以前から、
- 帝紀(天皇の皇位継承の系譜)や旧辞(神話や伝説)
というものが伝えられていた。
→無文字時代(書物として残っていないだけかもしれない)が存在していた!
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天武天皇は、この帝紀や旧辞に誤りが多いとして、修正と統一を計画し、
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記憶力が良いとされていた稗田阿礼(ひえだのあれ)に正確に誦み習わせ、
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書物の完成と思われたが、
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完成する前に天武天皇が崩御してしまい、未完成のまま。
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25年後
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元明天皇が意志を引き継ぎ、太安万侶に稗田阿礼が誦んだものを撰録させ、『古事記』が誕生した。
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これが、712年(和銅5年)のことである。
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このことは、『古事記』の序文に書かれている。
これは、その一部分。
(日本古典籍データセットより使用)
序文は、偽書であるという意見や後付けだという意見もある。
例えば、三浦佑之氏のサイトがある。
みなさんも、実際に読んで考えてみてはいかがですか?
《構成》
『古事記』の構成は上・中・下の三巻である。
- 上巻=神代の巻、中・下巻=人代の巻である。
★ 上巻
国が混沌としている状態
→天地創造(国が生まれる)の経緯
→神々の誕生
という流れで話は進む。
*神々の誕生について
- イザナミ・イザナキの国生み
〔天瓊を以て滄海を探るの図(小林永濯・画、明治時代)右がイザナギ、左がイザナミ。二柱が天浮橋に立っており、天沼矛(天逆鉾)で海水をかき混ぜて淤能碁呂島を作っているところ〕
- アマテラスの天の岩屋戸隠れ
〔『岩戸神楽ノ起顕』(部分)1857年(安政4年)歌川国貞 画〕
- スサノヲの天界追放
〔『本朝英雄傳』より「牛頭天王 稲田姫」歌川国輝 画〕
- ヤマタノオロチ退治
〔『日本略史 素戔嗚尊』に描かれたヤマタノオロチ(月岡芳年・画)〕
- オオクニヌシの国土経営と国譲り
〔大国主神像(出雲大社)〕
- ニニギノミコトによる天孫降臨
〔音川安親編 万物雛形画譜〕
大雑把にこれらの内容が語られる。
★ 中・下巻
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中巻は、神武天皇〜応神天皇、
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下巻は、仁徳天皇〜推古天皇の記事が語られる。
神武天皇東征、倭武命西征・東征・死、
神功皇后や仁徳天皇、雄略天皇といった英雄的人物の伝説、
軽皇子と軽大郎女の悲恋物語などが主な内容であり、
総じて皇位継承をめぐる争いや
大和政権の勢力拡大に関するものが中心を占める。
下巻の最後は系譜中心の記述である。
中巻は、神話・伝説的であるのに対し、下巻は、物語・説話的である。
《表現》
序文・本文(上中下の三巻)のほかに、
古事記歌謡とも呼ばれる長短およそ110首の歌がある。
*厳密には本文中に含まれている。
これは元々、宮中行事で歌われた歌謡や地方の民謡であり、
物語の場面に応じて、語句を入れ替え、叙情効果をあげている。
→古代人の率直な心情をこの家用から読み取ることができる。
◎ 表記
- 序文:漢文体
- 本文:和文体
- 歌謡:万葉仮名(一字一音の表記)
接続後や指示後の多用、同じ語の繰り返しなどから、
語り物としての特色が読み取れる。
《史的意義》
神話や伝説は民俗学的にも評価されている。
- 天皇の日本国支配の正当性強調
- 天皇制下の国家統一を目指す
→この2点が、『古事記』を歴史書ではなく、
叙事的な文学書の性格を帯びさせた要因とされる。
正史とされるのは、『日本書紀』である。
江戸時代まではさほど注目されてこなかったが、
本居宣長『古事記伝』により、
文学的情緒豊かな歴史書として注目されるようになった。
〔『國文学名家肖像集』所収の宣長像〕