剛体のつり合い
概要
大きさのない質点についての運動を考えるときは、その質点が移動していく運動(並進運動という)だけを考えればよかった。その際に、加速度運動をしない条件として、合力が
しかし大きさを考える必要のある 「剛体」 についての運動を考える場合には、並進運動に加えて、物体の回転運動も考えていく必要がある。
そこで剛体の場合には、剛体の重心が加速度運動することなく、かつ回転しないとき、「剛体にはたらく力がつり合っている」 という。
つまり、剛体のつり合いの条件は2つあり、
- 合力が
であること - 力のモーメントが
であること
となる。力のモーメントの辞書はこちらから(ある点のまわりで、回転するかどうかを考えるための値だったことを復習しよう)。
ここで、剛体が回転しないためには、どの点のまわりにも回転しない、つまりどの点のまわりのモーメントも0になることが必要になってくる。ただ実は、剛体にはたらく合力が
なので、剛体のつり合いの条件は、
- 合力が
であること - ある点のまわりの力のモーメントが
であること
となり、これが剛体が加速度運動せず、回転しない条件となる。合力の条件はベクトルの式であることに注意しよう(↓ の解き方も参照)。
解き方
「結局どうやって解いたらええねん!」となるので、剛体のつり合いの解き方をまとめると、実践的には
- 成分ごとの力のつり合いの式(平面だと
つ) - 適当な点まわりの力のモーメントが
(力がたくさん集まっている点を選ぶとラク)
の計3つの式を立てれば基本的にはなんでも解ける。
下の例で確認しよう。
例
【問】重力
- 棒の上端Aが壁から受ける垂直抗力の大きさ
- 下端Bが床から受ける垂直抗力の大きさ
- 下端Bが床から受ける摩擦力の大きさ
をそれぞれ求めよ。
【答】
はたらく力は以下の通り。
まず、水平方向の力のつり合い(合力が0)より、
鉛直方向の力のつり合いより、
そして、棒の長さを
となる。整理すると、結局
を得る。
大事なのは、どの点のまわりのモーメントを考えると楽かというところ。力がたくさん集まっているところを中心にすると、考える力のモーメントが減って楽になることが多い。
あとは(1)〜(3)を解けばよく、
(3)より、
(2)より、
(1)より、
と求められる。
この壁に立てかける棒の問題は、剛体の分野で定期テストなどでよく登場するので、まとめて演習しておこう。okkeの関連動画はこちらから。