光の波の干渉を実験で調べたいなーと思っても、2つの発振源から、同じ波長、同じ振幅、同じ位相の波を発することは、光波の場合は簡単にはいかない。
例えばライトを2つ用意したとしても、2つのライトから出る波の位相がどれだけずれているか、簡単にはわからないため実験するのが難しい。
そこでヤングは次のような工夫を行った。
光源から出た単色光(波長が一定のもの)を、まず第一段階目の単スリット(ごくごく小さい隙間のこと)に通す。そこで光は回折し、その単スリットから等距離の位置にある2つのスリットに波が伝わる。単スリットから等距離の位置にスリットが置いてあるので、この第二段階目の複スリットからは、位相の揃った2つの波が出されることになる。

これにより、擬似的に2つの発振源から、同じ波長、同じ振幅、同じ位相の波を発することが可能になったというのが、このヤングの実験のミソ。
そしてスリットから十分に離れたスクリーンを観察すると、明暗の縞模様ができて、光波が干渉していることが確認できる。(干渉縞という)
このように、工夫されたスリットを用いて光の干渉現象を観察する実験のことをヤングの(干渉)実験という。
問題では、この干渉条件(強め合い・弱め合いの条件)がよく問われることになるが、それは
となる。ただし、
明線・暗線と聞くと、レーザーのような光線のイメージが浮かぶかもしれないが、明線とは、スクリーン上のその点が明るくなること。逆に、暗線とは、スクリーン上のその点が暗くなること。スリットは基本的に、平面上の直線のような形なので、スクリーン上では、そういう明るい点や暗い点が直線上に並ぶことになり、それを明線・暗線と呼んでいる。
あれ、
こういう干渉の条件の導出はワンパターンなので、考え方を身につけてしまおう。
1. 光路差を考える
2. 位相のずれに注意する
3. 光路差が
近似を用いるので、ここが少し難しい。
ここでは、スクリーンまでの距離

図のようなケースにおいて、複スリット
このとき、スクリーンまでの距離が十分に長いとすると、
として良い。すると、光路差(光路長の差、今回は空気中で考えているので距離の差でOK)は、
と求められる。
さらに、複スリットの真ん中を
と近似することができ、また
となるので、光路差は、
と求められる。
反射など特に起きていないので、位相のずれは無し。

よって、ヤングの実験での干渉の条件(明線・暗線の条件)は、
であることが示される。
ヤングの実験は、物理学においてとてもとても大事な実験で、光というのは粒子なのか波動なのかという議論が繰り返されていた頃に、この実験により光は干渉することがわかり、「光は波動性を持つ」という証拠となったという意味で、とても重要な意味を持つ。(今では、光は粒子でもあり波動でもあることが知られている。詳しくは原子物理で学ぼう)
また、細かい補足として、
さらに、スクリーン上の明線の間隔が求められることもあり、
これらの隣り合う
と、スクリーン上の明線の間隔を求められる。(これは回折格子でのスクリーン上の明線の間隔と同じになる)
難しい問題になると、干渉縞の明線の光の強さが問われることがある。実は、スリットというのは細いながらも光に比べると太過ぎるので、同じスリットを通る光波同士で干渉が起こる。よって、

さらに、難しい問題になると、光の経路の途中に媒質が置かれているケースがあるが、その場合は、冷静に光路長を求めて、光路差を考えよう。
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