酸性雨
簡単なまとめ
強い酸性を示す雨のことで、森林の枯死や水生生物の死滅、建造物の溶解など様々な環境問題を引き起こす。
原因は石炭や石油を燃焼した際に発生する硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)。
1950年代、北欧から問題が顕在化し、1979年に長距離越境大気汚染条約が採択された。これを以て、酸性雨は世界初の国際的な環境問題と言われる。
対策として、脱硫装置の設置などが進められ、現在では状況が大きく改善した。
酸性雨とは
酸性雨とは、通常よりも強い酸性(pH5.6以下)を示す降水のこと。
本来雨は大気中の二酸化炭素が溶け込んでいるため弱酸性を示すが、大気中に窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)が多くなると雨水に溶け込み強酸性の雨が降るようになる。
被害
酸性雨の代表的な被害として、
- 森林の枯死
- 湖沼の水生生物の死滅
- 建造物の溶解
などがある。
継続的に酸性雨が降ると土壌や水が酸性化し、耐えきれずに植物が枯れてしまったり魚や水草などの水生生物が死滅してしまうことがある。
特にドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)は酸性雨によって多くの樹木が枯死し、酸性雨被害の代表例ともいわれる。
また、石灰岩で作られた建造物や彫刻などは酸に弱く、容易に溶けてしまう。
経緯
最初に酸性雨の被害が大きく問題視されたのは北欧で、突然森林が枯れたり、湖の魚が大量死したりといった事件が発生した。
この原因を調査すると、西欧や東欧で使用される石炭によるものだということが判明し、国際的な対策が必要になったため、ヨーロッパ諸国や米国、カナダを含めて1979年に長距離越境大気汚染条約が採択された。
原因
原因物質は
- 硫黄酸化物(SOx)
- 窒素酸化物(NOx)
の二つ。
これらは、
- 石炭・石油の燃焼(特に石炭)
- 自動車の排ガス
が主な原因。
石油や石炭(特に低品質な石炭)には硫黄分が含まれており、石炭を燃焼すると硫黄分が不完全燃焼を起こして硫黄酸化物が大量に排出される。
窒素酸化物は燃料の不完全燃焼によって排出されるもので、主な排出源は自動車のエンジンだった。
対策
- 工場、発電所などへの脱硫装置の設置
- 自動車への排ガス浄化装置の設置
などが対策として挙げられる。
脱硫装置は、石炭や石油を燃焼した際の排ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する装置のことで、大気中に硫黄酸化物を放出しないようにするもの。
排ガス浄化装置は、近年の自動車には必ず装着されているもので、排気ガスを白金などの触媒に触れさせることで有害な物質を無害な物質に変化させる。窒素酸化物は無害な窒素などに返還されたのち、大気中に放出される。