母性効果遺伝子
母性効果遺伝子とは
卵細胞に含まれる卵母細胞の段階で転写されたmRNAから発現する遺伝子のこと。
母の細胞に由来する遺伝子であることから、「母性効果遺伝子」と呼ばれる。
哺乳類から昆虫まで色んな生物にあるが、高校生物では、ショウジョウバエの例がよく取り上げられる。
ということで、以下ショウジョウバエの例を用いて説明します◎
ショウジョウバエの母性効果遺伝子
ショウジョウバエの母性効果遺伝子は、体の前後軸の決定に関わる。
【登場する母性効果遺伝子】
- ビコイド
- ナノス
- ハンチバック
- コーダル
- 未受精卵のとき
母性効果遺伝子はもちろんこの時から既に卵内に存在する。
遺伝子の種類によって、存在する位置が以下のように異なる。
- ビコイドとナノスの発現
ショウジョウバエは、受精後まず核分裂を行う。この時、母性効果遺伝子からビコイドとナノスが発現する。
2種類の遺伝子の発現により、2種類のタンパク質の濃度勾配ができる。
ビコイドタンパク質の濃度の高い方が将来頭部になるので、この時点で、前後軸が決定することになる。
- ハンチバックとコーダルの発現
ハンチバックとコーダルは卵細胞全体に分布しているが、ハンチバックはナノスタンパク質に翻訳を阻害され、コーダルはビコイドタンパク質に翻訳を阻害される。
その結果、ハンチバックタンパク質は頭部に、コーダルタンパク質は尾部に多く存在することになる。
これらのタンパク質は、この後調節タンパク質として働き、ハンチバックは頭部の形成に関連する遺伝子を、コーダルは尾部の形成に関連する遺伝子を活性化する。
※「母性効果遺伝子」と「母性効果因子」のちがい
母性効果遺伝子⋯ビコイド、ナノスなど遺伝子のことを指す(mRNAという認識でOK)
母性効果因子⋯母性効果遺伝子が翻訳されてできたタンパク質のことを指す。母性効果因子は頭部や尾部の形成に関わる遺伝子を活性化する。
ちなみに
今後教科書が改訂され、ナノス・ハンチバック・コーダルは、その名称が取り扱われなくなるようだ。
あくまでも、名称ではなく、どんな風に働いて体が形成されるか、ということが重要なのだと思われる。
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