多国籍企業
簡単なまとめ
複数の国に拠点を持ち、事業を行う企業のこと。
例)トヨタは、アメリカやヨーロッパ、タイなど外国にも現地法人や工場を作り、現地生産を行っている。
生産コストの低減、進出先の雇用創出・進出先への技術移転といった利点がある。
一方で、先進国では産業の空洞化が起こるおそれがある。
輸出とは違うのか?
あなたが、何があっても絶対に折れないシャー芯を発明し、株式会社オレーヌを興したとしましょう。
自分の家の近所に工場を建てて、全国の文房具屋さんに営業をかけます。
たちまちシャー芯はバカ売れし、株式会社オレーヌは急成長。中国からも注文が入るようになりました。そこで、あなたは中国への輸出を始めます。
しかし、この時点では、株式会社オレーヌはまだ多国籍企業ではありません。拠点は日本にしかなく、中国へは製品を送っているだけだからです。
ところがあなたは気付いてしまいます。これ、中国で生産した方が安くね?
日本で人を雇うには月20万以上はかかりますが、中国なら月8万円くらいで十分人が集まります。
そこであなたは中国に工場を建設し、現地の人を雇って生産を始めました。
この時点で、株式会社オレーヌは多国籍企業となります。日本以外の国に拠点を作ったからです。
多国籍企業とはこういうものです。複数の国に拠点があればいいんです。
なんなら日本工場は閉鎖してしまってもいい。本社機能が日本に残っていて、工場は中国にしかなくても、拠点が複数ありますから多国籍企業です。
逆に、あなたが「もう日本には将来性がない! 中国に移住してやる!」といって日本工場を閉め本社も中国に移してしまったら、それは多国籍企業ではなくなってただの中国企業になります。
なんとなく伝わりましたかね。
利点
- 製造コストの低減
- 進出先の雇用創出
- 進出先への技術移転
があります。
さっきの例で言うと、株式会社オレーヌは中国にも生産拠点を作ったことで製造費を下げましたよね。
さらに、中国工場では人を雇ってますから、これで雇用が生まれます。
さらにさらに、雇った中国人は、工場勤務を通じて絶対に折れないシャー芯の作り方を学び、自分で作れるようになるかもしれません。これが技術移転です。
ただ、実際に技術移転が起こるかどうかは企業次第なところもあります。大事な技術は絶対に外国には渡さねーぞって会社は、重要な技術職は本社から派遣して現地人には教えないことだって普通にあります。
ただそれだと進出先の国としては面白くない。うちの国に進出して労働者まで雇ってるくせに、大事な技術は教えないで単純労働ばっかりさせる。これじゃうちの国の技術水準は一生上がらないし一生先進国企業の下働きみたいなことさせられるやんけと。
しかも儲けも全部本社に持っていかれて残らないかもしれない。これじゃ進出された意味が全くないわけです。
というわけで、進出先の国、例えば中国なんかは、うちの国に進出するんなら、うちの国の企業と協力して新しい企業を作って、その企業で事業をしてくださいという風に決める。こうやって作られた企業を合弁会社(合弁企業)といいます。こうすれば、儲けを全部先進国の本社に持っていかれることは防げます。
さらに、その企業の経営陣や技術者にはうちの国の人を何割以上雇ってくださいと決める。これで技術移転も期待できますね。
欠点
- 産業の空洞化
が主要な欠点として挙げられます。
コストの低い海外に工場を移転して、先進国の工場を閉じてしまったら、先進国では失業者が発生することになります。これを産業の空洞化といいます。
さらに、途上国で生産された安い製品が出回ることで、物価が下がりデフレ圧力がかかります。
日本はここ数十年、これらによる不況とデフレに悩まされてきました。アメリカ合衆国でも製造業が衰退し、北部の工業地帯がラストベルトと呼ばれて問題になっています。