アプリ「okke」で効率よく学ぶ!

電位


電位

電場とならび、電磁気に入ると一気に物理が難しく思う原因ランキング上位である電位について。

電位は、簡単に言ってしまえば、重力による位置エネルギーと同じように、要するに静電気力によって発生するエネルギーのこと。公式と同じくらい、定義がとても大事で、定義を押さえておくと、電磁気の他のいろんな場面で理解がしやすくなる。「あれ、どっちの電位が大きいんだっけ?」みたいなときにも、定義を理解していると瞬時にわかる。

ただ、定義を押さえるには、くぐり抜けないといけない関門がいくつかあって、まずは次の用語にピンと来ない方は、それぞれ辞書で確認してから電位を学ぼう。そっちの方が圧倒的に電磁気マスターへの近道となる。

では、電位を定義すると、電位とは、単位電荷あたりの、静電気力による位置エネルギーのこと。つまり、 の電荷が、ある点で静電気力による位置エネルギー をもっていたとすると、その点の電位は、

で定義される。単位はボルト を用いる。

基本的には、具体的な電位の公式、つまり

  • 点電荷 から距離 の位置の電位は

  • 一様電場 内の距離 の電位差は

を使うことになるが、もし一から電位を求める際は、定義通り、静電気力による位置エネルギーを電荷で割るか、もしくは、最初から単位電荷への静電気力を考えて、その位置エネルギーを求めれば良い。(下の公式の導出を参照)

以下、

  • 静電気力が保存力である(つまり「静電気力による位置エネルギー」を考えられる)理由
  • 点電荷による電位の式の導出
  • 一様電場中の電位差の導出

を解説するので、興味のある方は是非。

ちなみに、動画で学んでイメージを持ちたい! という方には、受験メモ山本さんの動画や、みっきーさんの動画がオススメ。高度な知識を手に入れたい方は、ひぐまさんの動画を見てみよう。

静電気力は保存力

クーロンの法則によって導かれる静電気力(クーロン力)は、実は重力や弾性力と同じ保存力になる。つまり、静電気力のする仕事は、仕事の経路によらない。これを示すには詳しくは高度な数学が必要になるので、ここでは簡単な例として、一様電場中でサクッと確認しよう。(点電荷が作る電場中でも同様に保存力であることが示せる)

下の図のように、 の電荷を右向きの一様電場 の中に置き、A地点からB地点に運ぶとする。このとき、次の2つの経路を考えて、静電気力がする仕事の量が等しいことを確認しよう。

経路①:A→P→B

経路②:A→B(斜めに直線移動)

Untitled 1 P1 37.png

静電気力の大きさは、電場の定義より、右向きに

となる。

まず経路①について、A→Pの間で静電気力がする仕事は、静電気力の向きと変位の向きが直角なので、静電気力がする仕事は である。

P→Bの間では、仕事の定義より、静電気力がする仕事は、

よって、経路①において静電気力がする仕事は

と求められる。

経路②について、A→Bの間で静電気力がする仕事は、仕事の定義より

と求められる。(関係の公式を用いた)

よって、経路①②で静電気力がする仕事の量は等しく、またこれら以外のどんな経路を考えても仕事の量は変わらないので、静電気力は保存力である。

大事なのは、静電気力は保存力なので、静電気力による位置エネルギーを考えることができる! ということ。

以下、具体例を通じて電位の計算をやっていこう。

点電荷による電位の式

点電荷 の位置を原点とし、直線上で考える(平面の場合の補足は後で)。位置 の電位 を、電位の定義を用いて求める。

位置エネルギーの基準点を とする。

位置 にある単位電荷 にはたらく静電気力は、点電荷 から遠ざかる向きを正として、クーロンの法則より、

となる。

Untitled 1 P2.png

よって、電位はその定義より、 につり合う外力が、基準点 から位置 まで単位電荷を動かすときにする仕事(つまり単位電荷の位置エネルギー)として求めることができ、

となる。(積分公式は、数学Ⅲのxのp乗の積分公式を参照)

※力が位置によって変わるため、仕事は単なる掛け算ではもとまらず、積分の出番。詳しくは仕事の辞書を参照。

点電荷による電位の式を考える際には、通常基準点を無限遠にとるので、 として、

と求められる。

なお、平面の場合には、静電気力が保存力であることを利用して、途中で弧を描くルートをうまく選んで考えると良い。弧を移動する間は仕事が になるので、結局直線上の仕事のみ考えれば良く、上の議論と同じようにして示すことができる。

Untitled 1 P3.png

一様電場中の電位差

強さと向きが一定の電場を一様電場という。強さ の一様電場の中で、下図のように電場に沿って距離 だけ離れた点 を考える。 を基準とした の電位を求める。

Untitled 1 P1 35.png

基準点をどこか適当に置くと、もちろん点 にも にも電位が存在することになるが、ここで興味があるのは、それらの電位の差、つまり電位差

基準点を点 におき、そこから点 の電位を求めれば、それが自動的に電位差となる、というからくり。

一様電場中の単位電荷 にはたらく静電気力は、電場の向きを正として、電場の定義より、

となる。

電位はその定義より、 につり合う外力が、基準点 から まで単位電荷を動かすときにする仕事(つまり単位電荷の位置エネルギー)として求めることができ、

と求められる。

もし 点が電場に沿った方向に並んでいなくても、上の点電荷のときと同様、ルートを工夫して、電場と直角の移動を作り出せば良いので、全く同じ議論になる。このときに注意なのが、 は、 点間を結んだ距離ではなくて、電場方向の距離を表す

Untitled 1 P1 36.png

補足

ベクトル量だった電場とは異なり、電位はその定義からスカラー量なので注意しよう。つまり向きなどは存在しない。

では電位の重ね合わせはどうなるだろうか?つまり、周りに つの点電荷があるときは、どういう電位になるのだろうか?

これは、電位の定義において外力の仕事を考えるときに、それぞれの点電荷による静電気力の外力に分解して考えることができ、仕事は足し合わせられるので、それぞれによる電位を足し合わせれば良いとわかる。

タグ

# クーロンの法則
# 一様電場
# 仕事
# 仕事が経路によらない
# 位置エネルギー
# 保存力
# 単位電荷あたりの位置エネルギー
# 点電荷
# 電位
# 電位差
# 電場
# 静電気力