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クメン法


概要

「クメン法」とは、クメンを材料に使うフェノールの工業的製法のこと。プラスチック(フェノール樹脂)や医薬品などの材料であるフェノールを大量生産できる嬉しい方法です。

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副生成物のアセトンも溶媒などとして有用で、無駄がなく効率が良い方法です。

詳細

クメン法とは

クメン法は、フェノールの工業的製法の一つです。他の製法として、

  • ベンゼンスルホン酸ナトリウムのアルカリ融解
  • クロロベンゼンを用いる方法

などもありますが、これらは高温高圧の反応器が必要になることや、副生成物の処理が大変であること、あとは歴史的な経緯からクメン法が主流になっています。

クメン法の仕組み

結論から言えば、大学入試的には以下の材料・中間生成物・生成物を覚えておけばOKです。

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しかし、クメン法の仕組みが知りたくて駄々をこねている人向けに、雰囲気が伝わる程度にそれっぽく仕組みを説明しておきます。

(1) クメンの生成

ベンゼンに、酸触媒下でプロピレンを反応させてクメンを生成します。プロピレンの二重結合に酸触媒がを押しつけると、一時的に以下のような陽イオンの形になります(*補足1)。

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そしてベンゼンは、陽イオンが攻撃して置換反応が起こりやすいのでした。よって、この陽イオンがベンゼンに対して置換反応を起こします。

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これでクメン(イソプロピルベンゼン)が生成しました(*補足2)。

(2) クメンの酸化

ベンゼンに直接結合した炭素は、電子供与性の官能基として働きます。一旦難しい言葉とか仕組みとかを無視して結果だけ言うなら、炭素の電子がベンゼン環側に少し流れこむ性質がある、と言う感じです。

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するとそこに結合したが外れやすくなり、加熱することで原子が外れてしまいます。そこに酸素をぶつけることで「クメンヒドロペルオキシド」が生じます。

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(3) 酸で分解

過酸化物であるクメンヒドロペルオキシドは不安定で、酸を加えると水が放出されてしまいます。

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とはいえ、流石に電気陰性度が大きい酸素が陽イオンなんて超絶不安定です。しかし運良く隣に電子が豊富なベンゼン環があるので、以下のように分子内で攻撃を仕掛けます。

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一瞬三角形になることで、酸素と炭素が入れ替わるようなイメージです。そして最後に、ここからアセトンが剥がれることでフェノールが完成します(*補足3)。

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以上、気になる人向けの解説でした。

補足

  • (*補足1)アルケンへの付加反応で、などの酸が付加できたと思います。なんとなくそれっぽいイメージですね。 また、がくっつくなら端・中央の炭素の2択のくっつき方がありますが、マルコフニコフ則と同じ考え方で端にくっつきやすく、本文にあるような陽イオンになりやすいです。
  • (*補足2)初めにがプロピレンにくっつき、最後に置換反応の結果が放出されました。よって反応の前後での量は変わらないため、酸が触媒として働いたと考えられます。
  • (*補足3)一般に、ヘミアセタール構造は以下のように分解できました。単糖類が鎖状構造をとるときのやつです。 クメン法_10.jpeg

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