四つの農耕文化
四つの農耕文化
これ、授業では必ず習うと思うのですが、大抵はサラッと流されてしまいますしあまり印象に残ることもないでしょう。実際受験で取り上げられているところもあまり見たことがないので軽く解説するに留めます。
農耕文化とは
人間は原初、狩猟採集を生活の基盤としていました。旧石器時代が長く続きますが、一万年前になり、西アジアまたは長江流域で農耕が始まります。
農耕は世界中に広がってゆき、やがて人類は農耕によって得られる収穫を基盤にして生活するようになりました。人間の食の中心は、狩猟・採集で得られる肉や木の実から、農耕で得られる穀物や芋類などに移り変わっていったのです。
定義
農耕文化とは、つまり、生活の基盤を農耕に置いて発展した人間の生活文化全般を指します。人間は農耕を始めたことでそれまでの生活様式を大きく変えました。
「農業が生活の中心となっていくにつれ、その生活文化はそれぞれの農業に依存した特色をもつようになる。さらに人間社会の全体が農業から始まった生活文化を基礎とした体勢をとるようになる。農業社会の出現である。成熟した農業社会は社会階層の分化がおこり、統治者、神官、職人、芸人などが生まれてくる。このようにして、農耕文化はその社会全体を基本的に規定するようになった」 (中尾佐助著『栽培植物と農耕の起源』(岩波新書))
のです。農耕の始まりが、人間社会にいかに大きな影響を与えたかが分かりますね。
日本の植物学者、中尾佐助は農耕文化を分類するにあたり、世界各地における農業の起源と、その後の変化の歴史を辿り、それによって作られた農耕文化を系譜論的に区分しようとしました。
そして中尾は、世界の農業の起源は4種類あると結論付けました。それが皆さんの習う四つの農耕文化、根栽農耕文化・サバナ農耕文化・地中海農耕文化・新大陸農耕文化だったのです。
根栽農耕文化
起源は東南アジアの熱帯雨林気候地域で、メラネシア・ミクロネシアなど大平洋島嶼部をはじめ世界の熱帯雨林気候地域に伝播しました。タロイモ・ヤムイモ・バナナなどの根菜類(要は芋)の栽培が中心です。
サバナ農耕文化
起源はサヘルと呼ばれる西アフリカのサバナ気候地域で、西アフリカから東アフリカ、インド、中国、日本、東南アジア地域など世界の幅広い地域に伝播しました。アワ、ヒエ、モロコシなどの雑穀(ミレット)が中心で、ほかには大豆などの豆類も栽培されます。
地中海農耕文化
起源は所謂オリエント、西アジアの地中海性気候地域にあたり、北アフリカ、イタリア、さらに西ヨーロッパに伝播しました。
夏に乾燥することから小麦や大麦など冬作(秋に種を蒔き、冬の間に育てて春に収穫する)の作物の栽培が中心で、家畜の利用が盛んなことも特徴です。
新大陸農耕文化
起源はメキシコ高原やアンデス地方です。大航海時代以降、ヨーロッパ人により新大陸原産のジャガイモやトウモロコシなどが世界各地にもたらされたことにより、今では世界中に広まっています。熱帯雨林地域ではキャッサバ、高原・高地ではジャガイモ・トウモロコシが栽培の中心です。