枕草子 〜中納言参り給ひて〜
枕草子 〜中納言参り給ひて〜 深掘り解説
ここでは、枕草子 〜中納言参り給ひて〜について、あらすじをサクッとビジュアルで理解していこう。
みっともない事
中納言参り給ひて、御扇奉らせ給ふに、
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「参り給ひ」は、「参る」が謙譲語本動詞で参上するという意味、「給ひ」が尊敬語補助動詞で~なさるという意味。
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「奉らせ給ふ」は、「奉らす」が謙譲語本動詞で献上するという意味、「給ひ」が尊敬語補助動詞で~なさるという意味。
《それぞれの敬意の方向》はどうなっているかな?
→画像で答えを確認しよう。
「隆家こそ、いみじき骨は得て侍れ。それを張らせて参らせむとするに、おぼろけの紙はえ張るまじければ、求め侍るなり。」と申し給ふ。
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「いみじき」は、素晴らしいという意味。
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「参らせむ」は、「参ら」が謙譲語本動詞で献上するという意味。
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「え張るまじ」は、え〜打消で張ることができないという意味。
つまり、扇の骨を持っているけれど、紙に張ることができなそうで紙を探している場面だ。
「いかやうにかある。」と問ひ聞こえさせ給へば、
- 「聞こえさせ給へ」は、「聞こえ」が謙譲語本動詞で~申し上げるという意味、「させ」が尊敬語助動詞で、「給へ」が尊敬語補助動詞で最高敬語となり、なさるという意味。
《それぞれの敬意の方向》はどうなっているかな?
→画像で答えを確認しよう。
「すべて、いみじう侍り。『さらにまだ見ぬ骨のさまなり。』となむ人々申す。まことにかばかりのは見えざりつ。」と言高くのたまへば、
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「さらにまだ見ぬ」は、さらに〜打消で全く〜ないの意味。
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「言高くのたまへば」には、中納言のドヤっと誇らしげな感じがあるよ。
「さては、扇のにはあらで、海月のななり。」と聞こゆれば、
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「海月のななり」は、「名なり」ではなく「なるなり」が短縮した形。
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つまり「クラゲの名前だ」ではなく、「クラゲであるようですね」という意味になる。
「これは隆家が言にしてむ。」とて、笑ひ給ふ。
- 「これは隆家が言にしてむ。」は、前文で既知に富む良い返答を聞いて私(隆家)が言ったことにしようという意味になる。
みんなもテレビとかSNSでいい返答や言葉をパクって自分のものにすることあるよね。
かやうのことこそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、「一つな落としそ。」と言へば、いかがはせむ。
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「かやうのこと」は、自慢っぽいこと(今まで見たことがない骨だということ)を指す。
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「かたはらいたき」は、みっともないの意味。
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「な落としそ」は、な〜そが禁止を示し落とすなという意味。
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「一つも落とすな」というのでどうしようか、どうしようもできないよという反語が「いかがは」に含まれているね。