夜のキャメロットは静かだった。
昼の喧騒が嘘のように消え、石畳には月の光だけが流れている。
遠くでかすかに鐘が鳴り、塔の上を風が渡った。
ローブの影を引いて歩くひとりの影。
マーリンは手にした羊皮紙を見つめながら、小さく息を吐いた。
《買い物リスト》
・回復薬
・洞窟ガエルの舌
・転移結晶
・ぶどうパイ
・グレゴリアスの葉
「……アーサーめ、こんな時間に思いつきで頼みごとをするとは」
文句を言いながらも、声にはどこか柔らかい響きがあった。
月明かりに照らされた市場には、まだ灯りを落とさない露店がぽつぽつと残っている。
薬師の老婦人に声をかけて回復薬を受け取り、
隣の影の店で瓶詰めの洞窟ガエルの舌を買う。
透明な液の中で、奇妙な舌が静かに揺れていた。
「転移結晶なら、北の路地だよ」
通りすがりの少年が囁く。
マーリンは軽く頷き、フードの奥で微笑んだ。
路地裏の石壁には、淡い青の光を放つ転移結晶が並んでいた。
それをひとつ手に取ると、冷たい魔力が指先を伝う。
そして最後に――
城下の片隅で夜更けまで焼かれているぶどうパイの甘い香りが漂ってきた。
マーリンは足を止め、つい顔をほころばせる。
「……アーサーはこれが一番の目的だったのでは?」
包みを受け取ると、隣の薬草屋でグレゴリアスの葉を添えてもらう。
淡い香りが夜風に乗り、静けさを少しだけやわらげた。
買い物袋を片手に、城へ戻る道。
遠くの塔の上、アーサーの部屋に灯る明かりが見える。
マーリンはふと立ち止まり、月を仰いで呟いた。
「まったく……男というのは、いつまでも子供だ」
それでも、その声はどこか優しかった。
夜の風が、ローブの裾を静かに揺らしていく。
【Music List】
0:00 Shopping at Camelot
4:12 Nocturne of Camelot
8:05 Elegy of Avalon
11:05 Aureate Oath
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