宙を待っていた紅葉が姿を消した霜月の終わり。朝から冷え込んだ日の夜、いつものように講義のレポートをまとめようと、レポート用紙を机の上に広げ、考え込んでいると、ひんやりと凍えた冷気が頬を撫でた。誘われるように窓の外を向くと、濡れた窓ガラスの向こう側に綿埃ような雪片がひろひらと舞っていた。それらは徐々に増えていき、いつの間にか宙いっぱいに広がっていた。時折混じる氷の粒や、溶けて雨粒のようになった欠片が窓ガラスや屋根に当たって、パチパチと乾いた音を立てた。溶けた雪が流れとなって排水管を降っていく音がうっすらと聞こえてくる。いつもよりも暗く見える空に温泉街から吐き出された煙がゆらゆらと漂っていた。
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[瀧安寺五重塔]
雲竜谷富士見地区1丁目にある瀧安寺の境内にある五重塔。瀧安寺の創建は長徳5年999年。同年に噴火した富士山の主「木花咲耶姫」の魂を鎮めようと富士の山頂を臨この地に立てられた。五重塔は、長徳8年に建てられた。それまでは、富士山を観測するための高台があったと考えられる。平安京から送られた陰陽寮の官僚が噴煙を観測し、京へその兆しを逐一報告していたと伝えられている。五重塔は江戸時代中頃に火災によって焼失したが、その後、再建された。五重塔の周囲には高い建物がなく、同地区のランドマークになっている。