書類送検=犯罪者は間違いなこと
よくニュースなどで「〇〇氏が書類送検されました」といった報道を目にすることがあります。
そして多くの人はその報道を見て、「あの人、悪い人なんだ」と思い込んでしまうと思います。しかし、書類送検=犯罪者は間違いなんです!
今回は、「書類送検=犯罪者は間違い」なことについて、解説していきます。
なぜこの記事を書くのか
理由はシンプルです。「書類送検された=犯罪者」と思い込んでいる人があまりにも多すぎるからです。
しかし、その認識は法律上も事実としても完全な間違いなんです。
書類送検とは?
書類送検とは、警察が捜査を終えた事件について、事件記録や証拠などを検察に送る手続きのことです。
これは刑事訴訟法に基づいた流れであり、「検察への送検=犯罪が確定した」ではありません。
そもそも送検には2つの種類があります。
- 書類送検:逮捕せずに書類だけを送る
- 身柄送検:逮捕された容疑者の身柄と共に書類を送る
つまり、書類送検は「逮捕の必要がない」「証拠隠滅の恐れがない」「犯罪性が極めて低い」「逃げも隠れもしない」と判断されたケースで行われることがほとんどです。
むしろ重大な犯罪であれば基本は身柄送検(逮捕)がされます。
※警察と検察について
検察官は司法試験に合格し、法曹資格を持つ法律の専門家です。
一方、警察官は司法試験の合格は不要で、警察学校などの教育を経て任用される職です。両者は役割が異なり、警察は捜査・逮捕を、検察は起訴・不起訴の判断を担当します。
もし検察が起訴をした場合、裁判に参加するのも警察官ではなく検察官となります。
書類送検は「通過点」にすぎない件
よくある誤解の1つが、「書類送検された時点で悪いことをした証拠がある」というものです。しかし、これにも大きな間違いがあります。
刑事告訴(けいじこくそ)が受理された場合、例え全く犯罪の証拠が無かったとしても、法律上、受理した場合は警察が捜査し、結果に関わらず送致する義務があります。
つまり、書類送検という行為は形式的なものであり、その内容に違法性があるかどうかはまったく別の話なのです。
名誉毀損や侮辱罪での書類送検の例
名誉毀損や侮辱罪といった「軽微な罪」で書類送検されるケースは非常に多いのです。
たとえば(名誉毀損)…
①「〇〇くんが〇〇ちゃんと浮気していた」と学校内で言いふらす
②政治家が「ワイロを受け取っていた」などと伝える
※いずれも事実であることを前提として例に挙げています。
①と②これらはたとえ事実であっても、相手の名誉を傷つけたとされれば名誉毀損として告訴される可能性があります!
ただし、公共性と公益性があり、真実である旨の証明が出来れば「違法性の阻却」が行われる為、名誉毀損罪が成立しません。
今回の例で言えば①は、事実ではあるが「私人の名誉を傷つけただけ」なので名誉毀損罪が成立する可能性が極めて高くなります。
逆に②の場合は事実であり、なおかつ「公共性と公益性が認められる」ため名誉毀損罪の違法性が阻却され、名誉毀損罪は通常、成立しません。
しかし②の場合でも、刑事告訴を受理した場合は、形式上、書類送検をすることになります。
つまり、全く犯罪が成立しない案件でも書類送検されることは全然あるということです!
警察の「相当処分」とは?
書類送検を行う際に、警察は検察に対して次のような意見をつけることがあります。
- 起訴相当:起訴すべきだという判断(犯罪の証拠が揃っているなど)
- 起訴猶予相当:起訴できるが、事情を考慮して起訴しない
- 不起訴相当:犯罪が成立しない、証拠不十分、違法性がないなど
※相当処分については近い意味でも言葉が異なる可能性があります。
つまり、書類送検はあくまで「検察にバトンを渡すため」のものであり、その後の判断で、起訴or不起訴が決まり、ようやく裁判に進むことが可能になります。
書類送検と書類送付の違い
一般的に「書類送検」という言葉が出ると、「悪い人」のような印象を受けると思います。
一方、「書類送付」という言葉だと、「どこか軽く聞こえる」ハズです。しかしどちらも全く同じ意味なのです!
そのため、意図的に「書類送付」ということで印象を薄めたり、「書類送検」ということで強い印象を与えることも可能という点には注意しておきましょう。
まとめ:最後に伝えたいこと
何度も言いますが、書類送検=犯罪者ではありません!
むしろ、本当に重大な犯罪であれば「逮捕されて身柄送検される」はずです。書類送検は…
- 形式的な捜査の流れ
- 違法性の薄い案件
- 罪が軽い事件
などの対応として行われるケースも少なくありません。
あなたが目にする「書類送検された」というニュース、その裏にどんな事情があるのか?
それをインターネットやSNSも活用して自分で調べ、判断する力を持ってほしいと思います!
少なくとも、「書類送検されただけで悪人だ」と決めつけるような報道の見方には、今日からサヨナラしていきましょう!
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。