トヨタの最先端ロボット取材してきた!~人間とロボット共存編~
(サムネイルの一部引用元はこちら)
皆さん、こんにちは。
突然ですが皆さんDXとは何か知っていますか?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、企業がデジタル技術を活用して、業務やビジネスモデル、組織、企業文化などを変革し、競争優位性を確立することです。
言わば仕事のデジタル化です。
そして仕事のデジタル化と言えばオフィスで働く仕事などといったイメージが強く、逆に工場などはデジタル化と無縁なイメージを持っている方が多いのではないのでしょうか?
しかし実は工場こそデジタル化が必要な仕事です。実際に現在に至るまでに、工業製品を生産する多くの工場ではデジタル化が積極的に行われてきました。
そこで今回、あのトヨタ自動車の全面協力の元、トヨタが新たに開発している未来の溶接ロボットを取材してきました!
人間とロボット共存編(今回)とものづくりと進路選び編の2本立てでお送りしていきます。
今後の進路の参考になるのはもちろんのこと、受験における小論文対策や考え方の参考になる内容が盛りだくさんになっているのでぜひ最後まで読んで参考にしてくれたら嬉しいです。
目次
- 3週間が3日に!?トヨタが開発する未来の溶接ロボット
- 溶接ロボットが可能にした新しい溶接工法SFA
- 逆転の発想から生まれたアイデア
- 人間とロボットの共存が生む明るい未来
3週間が3日に!?トヨタが開発する未来の溶接ロボット
今回、取材してきたのはトヨタ自動車と安川電機が開発を進めている、自動車の安全を支える部品の製造を目的とした新しい溶接ロボットです。
このロールケージと呼ばれる部品の製造には従来、3週間程度の時間を要し、さらに手作業で組み立てる必要がありました。
その様子を見た豊田章男会長が「トヨタらしく効率的な組み立てができないか※」と検討を行い、今回の新しい溶接ロボットの開発が始まりました。
※トヨタの工場では効率的に作業ができるトヨタ生産方式が運用されています。詳しくはこちら
そして新たに開発をした溶接ロボットはなんと、同じ工程をわずか3日間で作ることを可能にしました。
さらに驚きなのがなんと2週間かけて人間が作った製品よりも溶接ロボットが作った方が高い品質の製品を、そして高い品質を均一に作ることが可能な点です。
(新開発の溶接ロボットがロールケージを溶接している様子)
(愛知県豊田市某所にて著者が撮影)
溶接ロボットが可能にした新しい溶接工法SFA
新しい溶接ロボットが可能にした新しい溶接工法「SFA」では、品質向上とスピードアップの両方を同時に実現しました。
従来の手作業では自重により溶接部分が垂れてしまったり、大きな隙間があると余分に鉄を利用する必要がありました。
しかし新しい溶接ロボットなら溶接部分の垂れの発生は解消され、大きな隙間でも溶け落ち抑制制御により溶接が可能になりました。
(左が従来の工法。右側が今回の新工法。自重によるタレが明らかに減っている。)
(提供 トヨタ自動車)
また従来の手作業ではどうしても製品の品質に若干のムラがありました。
この製品を使うお客様にとって、ムラは死活問題です。
しかし今回の新工法は溶接ロボットということもあり高品質な製品を均一に、スピーディーに作ることが可能になりました。
(新工法で制作されたロールケージを装着して走る車両)
(提供 トヨタ自動車)
逆転の発想から生まれたアイデア
現在でこそ大幅なスピードアップを実現している新工法ですが、最初から順調だったわけではありませんでした。
開発当初は従来と同じ速度で作業を行おうとしましたが、品質に大きな問題が発生しました。
そこで「人間よりゆっくり丁寧に作業する」というアイデアを採用した結果、品質が劇的に向上しました。
通常ロボットを利用した自働化※1を行う際に、従来よりも遅くすることはあり得ません。
開発を行ったトヨタ自動車と安川電機の両社もロボットをゆっくり動かすことは今まで経験がなく初めての挑戦だったそうです。
しかし人間よりもゆっくり丁寧に作業する逆転の発想を採用し、その後も改良が続けられ、現在では従来より短期間で高品質な製品を製造できるようになりました。
※1自働化について
トヨタ自動車の表現に則ってあえて自「働」化という表記を行なっています。詳しくはこちら
人間とロボットの共存が生む明るい未来
自動車産業のみならず幅広い業種にてロボットの導入は、「人間の仕事を奪ってしまうのでは?」という懸念がつきものです。
実際に新しい溶接ロボットの開発人は「従来からロールケージを作っている熟練工から批判されるかもしれない」そう思っていたそうです。
しかし、熟練工からは真逆の反応が返ってきました。
なぜなら、従来、作業の1から100まですべて担っていた熟練工が、新しい溶接ロボットの導入によってより高度な技術の習得や開発業務に専念できるようになったからです。
結果的にロボットが人間の仕事を奪ってしまうどころか、
ロボットが熟練工の技術を習得
↓
熟練工はさらに高い技術を習得
↓
その技術をロボットが取得
といった好循環が実現しました。
これこそが人間とロボットの目指すべき共存のカタチではないでしょうか?
(溶接ロボット)
(愛知県豊田市某所にて著者が撮影)
まとめ
日本における製造業はGDPの約2割を占める重要な産業です。
DX化などを初めとする自働化がさらに広まれば、日本経済全体にも大きな発展が期待できます。
製造業におけるDX化は、人間とロボットが共存する未来への第1歩です。
次回は、「工場においてDX化が求められる理由とそれを踏まえた進路について」詳しく話していきます。
最後までありがとうございました。