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【旅行記】アウシュビッツ強制収容所①


世界史
2025年5月10日

こんにちは。
今回は、スウェーデンに留学中の私が、3月にポーランドのアウシュビッツ強制収容所を訪れた時に学んだことや感じたこと、考えたことを共有します。

アウシュビッツ強制収容所とは

アウシュビッツ強制収容所とは、ナチス=ドイツによるユダヤ人の大量殺戮が行われた強制収容所の一つです。

このような強制収容所はいくつか残っていますが、その中で最も規模が大きく、犠牲者も多かったところで、ナチスによるホロコーストの象徴的な場所として世界遺産に登録されています。

ポーランドの古都クラクフの近くに位置しています。

アウシュビッツ強制収容所は現在、アウシュビッツ博物館と第二強制収容所が一般公開されています。

今回私は、アウシュビッツ博物館の唯一の日本人ガイドである中谷剛さんのツアーに参加しました。

人類の負の財産

アウシュビッツ強制収容所への入り口となるゲートには、
"ARBEIT MACHT FREI(働けば自由になる)"というドイツ語の文言が書かれています。

しかし、当時このゲートを潜った人々を待ち受けていたのは劣悪な環境での強制労働と大量殺戮でした。



そもそも、「ホロコースト」とはヘブライ語で「破滅」「全滅」を意味する語に由来しているそうです。
これが転じて、現在では主にナチス=ドイツによるユダヤ人の大量殺戮を指す言葉として使われています。

なぜホロコーストが起こったのか

ドイツは、第一次世界大戦に負けたことで、到底払うことができない巨額の賠償金を背負いました。ドイツの経済や社会が混乱する中、1929年の世界大恐慌によってさらなる経済不況に陥ります。これにより大量の失業者が生まれ、人々の不満が溢れました。

そこで登場したのが、アドルフ・ヒトラー率いるナチス党(国民社会主義ドイツ労働者党)です。ヒトラーは、「ユダヤ人こそがすべての不幸の原因であり、我々の敵である」と謳いました。

そもそも、キリスト教においてユダヤ人は「救世主イエス・キリストを殺した者」とされ、キリスト教徒が多いヨーロッパでは差別の対象となっていました。それを利用し、ヒトラーは「ユダヤ人こそがすべての富を独占しており、そのせいでドイツ人が経済不況や失業に苦しんでいる」という物語を作り上げたのです。

当時、ユダヤ人の中には商人として実際に裕福な生活をしている人もいましたが、大多数のユダヤ人は差別に苦しみながら貧しい生活を送っていたのが現実でした。

しかし、元々ドイツ社会に浸透していたユダヤ人差別の感情と、経済不況への不満が重なり、このヒトラーの主張は広い支持を集め、世論はユダヤ人の強制収容を支持しました。

誰が「ユダヤ人」なの

「ユダヤ人」とは、一般的にユダヤ教を信仰する人を指します。

しかし、ヒトラーは「ユダヤ人」を信仰する宗教によってではなく「科学的」に定義しようとしました。ヒトラーは、アーリア人が人種的に優位であり、そうでない人種は劣っていると考える人種主義者で、理想的な「アーリア人」を頭蓋骨の大きさや鼻の高さ、髪や目の色などで「科学的」に定義しました。

そして、アーリア人の優位性を保つため、アーリア人以外の「劣性人種」の繁殖を制限する政策を始めます。
この政策の一つが、強制収容所でのホロコーストでした。

そして、ホロコーストの対象となった「劣性人種」はユダヤ人だけではありませんでした。

ユダヤ人に加え、同じように差別されていたロマ(ジプシー)と呼ばれる人々や、障がい者、同性愛者なども「劣っている」とされ、強制収容所に送られ犠牲になりました。

このようにホロコーストの犠牲となったのは、合計で600万人に上るといわれ、そのうちアウシュビッツで犠牲となったのは約110万人です。

この600万人には一人一人名前があり、家族や友人、愛する人がおり、感情があった人間です。
アウシュビッツ博物館には、当時アウシュビッツに収容された人々が持ってきた荷物なども残されています。



写真は、収容者が履いていた靴です。
手前は、収容者の一人だった幼い子どもが背負ってきた革製のバックで、親が子どもとはぐれた時のことを考え、子どもの名前や住所が書かれています。

この他にも、大量の服やカバン、メガネ、障がい者用の補助器具などが残されています。

当時、収容者のこれらの財産はすべてナチスによって没収されました。
さらには、収容される際には髪を剃られ、それらの髪も未だ博物館に残されていました。

展示を見ながら、これら一つ一つの物に持ち主がいたことを考え鳥肌が立ちました。
ただの数字だった「600万人」がとても現実味を帯び、言葉にできない絶望感や悲しみ、憤りを強く感じました。

現代に生きる私たちへの宿題

今回は、ここら辺で一度記事をまとめようと思います。

ナチス=ドイツはホロコーストのため

  • 「経済不況の原因はユダヤ人だ」という物語を作り上げ
  • 「科学的に」「劣った」人種を定義した

という手法を取りました。

現代に生きる私たちは、

  • 無意識に「自分たち」を定義し、社会への不満を「自分たちではない誰か」に押し付けようとしていないか。
  • 盲目的に「科学的根拠」を信じていいのか、それが政治的に利用されている可能性はないか。

といったことを考える必要があるのではないでしょうか。


次回も、引き続きアウシュビッツ強制収容所を訪れて学んだことについてお話しします。

この記事の著者

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一葉

塾に通わずに国際基督教大学(ICU)に一般入試で合格。専攻はジェンダー・セクシュアリティ研究と言語教育。スウェーデンに留学中です!🇸🇪 ICU・受験勉強・英語の豆知識・留学などに関する情報を発信していきます!